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復興のために職を求める台風被災者たち

記事の概要

国際労働機関(International Labour Organization)は21日、台風30号で大きな被害を受けたレイテ島など東ヴィサヤ地方で、生活を立て直すための雇用を求める声が大きくなってきていると報告した。

ILOによると、Department of Labor and Employment(日本の厚生労働省に相当)が最近開催した雇用フェアには、畑を失った農民など数千人の求職者がレイテ島のタクロバンやオルモックから詰めかけた。しかし当日、職を得ることができた被災者はわずか171人だけであった。

すでに被災地では農業や漁業に対する復興支援には焦点が向けられてきた。しかし被災者の半数は被災前に小売業や飲食業、ジプニーの運転手など第3次産業に従事していた労働者である。このため今回開催された雇用フェアのような施策は今後も必要とされる。

元の記事を読む→ 【2013年12月21日:THE PHILIPPINE STAR

苦難が続く被災者たち

THE PHILIPPINE STAR

フィリピンの大手紙「THE PHILIPPINE STAR」から記事を引っ張ってきました。もうすぐフィリピン人にとって1年で最大の行事であるクリスマスですが、被災者の人たちは依然として苦しい生活を強いられているようです。

フィリピンの地図

最初に記事の中に出てくる場所を確認しておきます。左の地図で青いマーカーがあるのがフィリピンの首都マニラ、黄色がフィリピン第2の都市セブ、そして赤が甚大な被害を受けたレイテ島の最大都市タクロバンです。

東ヴィサヤ地方の地図

そして、記事に出てくるオルモックというのは緑のマーカーです。レイテ島の西の玄関口であり、セブとは高速船で2時間半で結ばれています。タクロバンが壊滅的な被害を受けたため、多くの人がセブから物資を持って船でオルモックに渡り、そこからレイテ島内の親族などの元に支援に向かいました。

現地で雇用を吸収できない可能性が

大きな災害が起きた時に最も大変かつ時間がかかるのが復興です。被災者たちが元の生活を取り戻すのは大変なことです。僕は関西の出身なんですが、阪神淡路から1年経っても神戸市内の公園にはブルーシートで作ったバラックが並んでいました。東北の大地震から2年以上経ちましたが、今なお元の生活に戻れない人が数多くいることはみなさまご存知の通りです。

今回の台風30号でも発生直後からどうやって復興するのか、特に被災者自身の生活立て直しに重要な雇用の確保をどうするのかが議論されてきました。被災者が元の生活に戻るということは、元通りに雇用を得て生活基盤を取り戻すことが絶対条件だからです。

今回の記事を読むまで、東ヴィサヤとか田舎で大した産業もないから、農業とか漁業とか第1次産業従事者ばかりだと思っていたのですが、まさかサービス業に就いていた人が半数とは思いもしませんでした。

雇用とか全然詳しくないのですが、ちょっとこれは深刻なような気がします。第3次産業って消費が活発にならないと雇用を生み出せません。誰も買い物に来ないスーパーが店員を雇うわけにいきませんし、誰も食べに来ないレストランはコックの数を減らすしかないですし。

大きな被害を受けて被災者たちがまともに可処分所得を持っていない今の東ヴィサヤで、3次産業が雇用を吸収するのはけっこう大変なのではないかと思います。つまり、今まで3次産業で働いていた約半数に及ぶ被災者たちを受け入れるだけの雇用を、東ヴィサヤで生み出すことができないのではないか、ということです。

日本で働いてもらったらどうでしょうか?

そこで一つ提案なんですが、彼らに日本に来て働いてもらうというのはどうでしょうか? いやいや、日本でも大卒新人が就職難だし、転職しようと思ったらブラックしかない状態でしょ、とおっしゃる方もいるかもしれません。ですが、実は人手がまったく足りず人材難にあえいでいる産業があります。建設業です。

アベノミクスの効果でしょうか、建設業界は活況を呈しています。大手ゼネコンの建設工事受注額は前年比で5割以上の大幅プラスが続いています。ところがそれと同時に深刻な事態が進行しています。それが建設作業員の大幅な不足なのです。

リーマンショック以降、建設業界は不況に見舞われ、現場作業員の給与カットが相次ぎました。年収が平均で300万円前後まで下がったため、この時期に多くの職人が建設業界を去り、今では15年前に比べて建設業で働く人の数が3割近く減っています。残った作業員たちも高齢化が進み大量退職の時期が近づいているのですが、建設業界は代表的な3K職場ですので若者たちが敬遠し、新規の作業員が大量に入ってくることもありません。

このため、急に活況を呈した建設業界で人手不足が深刻化しているのですが、これは一時的な現象では終わりません。東北の震災復興、東京オリンピック、リニア新幹線と大きなイベントが続くため、この先も長期に渡って建設業での人材不足が続く恐れが高いのです。(以上出典:東洋経済オンライン

日本のためにもフィリピンのためにもなるはず

で、この建設業界での人材不足を、台風で職を失ったフィリピンの人たちに埋めてもらってはどうか、と。

フィリピンは国民の10人に1人が海外で働いている出稼ぎ大国です。海外で働くことに対する抵抗感は低いです。

また、フィリピンのサービス業の賃金ってムチャ安です。うちの近所のスーパーの店員に聞いたら、1ヶ月で8,000ペソ(18,000円)って言ってました。マニラで18,000円ですから、東ヴィサヤとかもっと安いでしょう。それが日本の建設現場で働いて、ちょっと足元見られて1年で200万くらいに下げられたとしても、彼らにしては万々歳だと思います。

さらに、今回の台風被害に際してほとんどの国は被害者の救助だけで終わっています。そんな中で唯一日本だけが、1,000人を超える自衛隊を派遣して被害者を救助した上、収入源を失って困っている被災者たちに雇用まで提供したってなった日には、ただでさえ高い親日意識がさらにハイパーアップ間違いなし。我が国の国益にもつながります。

また、かつてのフィリピンから日本への出稼ぎは「ジャパゆきさん」って言葉が象徴する通り、風俗系が中心のいわば「影のある」出稼ぎでした。ですが今回僕が言ってる建設現場への出稼ぎは、被災者が元の生活に戻るための、いわば「光を取り戻すための」出稼ぎです。決して悪いことではないと思うんです。

被災したフィリピン人たちが、大変ではあるけれど日本の建設現場で働いて、被災地の家族たちに送金する。何年かがんばって被災地が復興した頃にフィリピンに戻る。そして子どもと東京オリンピックをテレビで見ながら、「あの競技場、実はお父さんが作ったんだよ!」って。悪い話じゃないと思いませんか? 安倍さんとお友だちの方、ぜひ提案してみてください。笑